オランダの家庭医、マフトルド・フーバー医師が提唱している健康の考え方です。患者自身が指揮者として、家族や専門職を巻き込みながら、方向を決め、チャレンジし、自らの健康を向上させていくという、健康のコンセプトです。

これまでの健康観としては、1999年にWHOが提唱した以下の概念が一般的ではないでしょうか。

「健康とは、身体的・精神的・霊的・社会的に完全に良好な状態であり、単なる病気あるいは虚弱でないことではない」

しかし、在宅医療に携わる中で、私は日々、違和感を抱いていました。この世の中に、WHOがいうような完全に健康な人がいったい何人いるのだろうか?健康と不健康に境界線を引くことは、この世の中の現実を正しく捉えられなくしているのではないか?と。

例え加齢による衰えであっても、例え生活に何の支障もない軽度の検査値の異常であっても、ADHDなどのちょっと他人とは違った行動特性を持った人であっても、それが異常と捉えられ、治療の対象となってしまう。西洋医学・医療はそれらを治療できる万能の科学としてあがめられ、人々を医療に依存させてしまっているのではかろうか?

ポジティヴヘルスというコンセプトは、そんな私の疑問に一つの答えを示してくれました。以下に、私の目線で捉えた、ポジティヴヘルスの要点を箇条書きにしてみます。

ポジティブヘルスについて

主体的なとりくみ

ポジティヴヘルスは、ある一定の状態を示すものではなく、本人が主体的によりよい状態を目指すとりくみです。

健康の6次元

WHOでは、身体、精神、社会、スピリチュアルの4つの軸で健康を捉えています。ポジティヴヘルスも、およそ同じような捉え方だと思いますが、より一般の人でも馴染みやすい言葉が使われているように思います。以下の6つの要素で健康を捉えます。どの項目も等しく重要であることも、一つのポイントです。患者本人と医療者が、今の状態を評価し、これからの方向性を一緒に考えていくための道具が、この6次元の役割です。

  1. 身体的機能
  2. メンタルウェルビーイング
  3. 生きがい
  4. 生活の質
  5. 社会参加
  6. 日常機能
クモの巣

「クモの巣」(iPH提供)
※出典「オランダ発 ポジティヴヘルス」 シャボネットあかね著

レジリエンス(復元力、回復力)

自分で治す力を活かし、育みます。治療によっては、あるいは介護の仕方によっては、この自分で回復しようとする力を邪魔することもあり、私たち、医療・介護従事者は細心の注意を払わなければなりません。

デスカレーション

耳慣れない言葉ですが、デスカレーションの反対語はエスカレーションです。医療や介護におけるエスカレーションとは、どんどん治療やケアを盛り増ししていくことであり、デスカレーションは、治療やケアを減らしていき、より自立的な生活を促すことです。