森を見て木を判断しよう

患者さんの血圧や体温などの
数値にとらわれすぎて、
「木を見て森を見ず」
の状態に陥ってしまうこと、
ありませんか?

 

そこで、
今回わたしがお伝えしたいことは、

「森を見て木を判断しよう」
ということです。

ここで言う「木」とは、
血圧や体温などの患者さんの数値です。

「森」とは、
患者さんの顔色や活気、
息づかい、
食欲などの全身状態です。

私は常日頃から、
もっと、こういう感覚的な情報を大事にした方が良いと思っています。

 

確かに、数値は誰が見てもズレのない客観データですし、
自信を持って医師に伝えられます。

 

一方で、顔色や活気などは、
観察する人の主観も大いに関わってくるため、
自信を持って伝えるのをためらう気持ちもあるでしょう。

ですが、私たち医師も、
患者さんの全体像を見ずに、

数値だけ見ても、
妥当な判断はできません。

患者さんの目の前にいて、
状態を目の当たりにしている人の感覚的な情報も非常に大切なのです。

電話再診やオンライン診療という手段があっても、
対面診察が重要視されている理由は、
こういった視覚的情報、
感覚的情報の価値があるからだと私は解釈しています。

 

例えば体温を例にとりますと、
37.4℃だから軽症で、
39.0℃だから重症とは一概には言い切れません。

重症の敗血症では、
体温が上がらないことだってあります。

あるいは、37.4℃でも、
倦怠感が強く、
食事も摂れず、
夜も眠られないのならば、

解熱剤を使うことを考慮してよいと思います。

一方で39.0℃であっても、
活気があって、
食事もしっかり摂れていれば、

むしろ解熱剤を使うことは、
体の免疫反応を抑制してしまうことになります。

 

 

今度は血圧を例に取ってみます。

普段は血圧が160/90mmHgの人が、
血圧が100/60mmHgで低めだったとします。

数値だけ見たら、良い数値ですよね?

だけど、この時、
患者さんが、

冷や汗をかいて、
真っ青な顔をされていたとしたら…

ショック状態に至るかもしれない、
危険な病気が発症していることも想定しないといけません。

 

または、同じ患者さんが…
血圧190/90mmHgと高めであっても、
ケロっとした表情で過ごされていたら…

そのまま様子を見てもいいと思います。
高血圧緊急症でないかぎりは、
血圧を急いで治療する必要性はありません。

 

デイサービスや訪問入浴などの際に、
「血圧はいくらまでなら入浴可能ですか?」
「体温は何度までなら入浴可能ですか?」

と聞かれることがあるのですが…

ここまで書いてきましたように、
数値だけではOKともNGとも
判断できないというのがおわかり頂けたとおもいます。

 

繰り返しになりますが、
大切な事は、
患者さんの全身状態が良いか悪いかの大局を把握した上で、
今の数値が大丈夫なものなのか、
要注意なのかを判断することです。

ということで、今回は
「森を見て木を判断しよう」
というお話でした。